【2026年最新ルポ】白老 町が世界を惹きつける理由——ウポポイ開業6年、極上グルメとモール温泉が創り出す「アバンダント・ローカル」の未来
白老 町。北海道・胆振地方の太平洋に面したこの静かな町が今、国内のみならず世界中から熱い視線を注がれる目的地へと変貌を遂げている。新千歳空港からJR特急でわずか40分という抜群のアクセスを誇りながら、一歩足を踏み入れれば、雄大な太平洋と樽前山の雄姿、そしてポロト湖を包み込む原生林が静かに広がる。2020年の国立アイヌ民族博物館・民族共生象徴空間「ウポポイ」誕生から6年。単なる文化観光の地を超え、独自の食文化と上質な温泉滞在が融合した極めて多層的なディープ・デスティネーションとして、この街は新たな覚醒の時を迎えている。
豊かな森が太平洋へとそのまま落ち込むこの土地は、古くからアイヌの人々が自然の神々に感謝を捧げ、生活を紡いできた歴史的ルーツを持つ。極上のブランド黒毛和牛である白老牛や、近海で揚がる新鮮な海の幸がもたらす豊かな食文化はもちろん、植物由来の稀少なモール温泉の心地よさはまさに贅沢の極みだ。今や感度の高いトラベラーや都市部のクリエイターたちが白老 町を目指して訪れ、ここでしか出会えない「豊かなローカルの日常」を再発見している。2026年現在の現地取材を通じて、変わりゆく街の最新熱量をお届けする。
ウポポイの現在地:見る観光から「生活文化を体感する共生」へ

2020年の開業から6年が経過したウポポイ(民族共生象徴空間)は、かつての「見学型施設」という枠組みを完全に脱し、アイヌ文化を五感で深く受けとめる体感型フィールドへと深化している。ポロト湖畔の静けさに抱かれた広大な敷地には、木々の葉を揺らす風の音と、復元されたチセ(家屋)から立ち上るささやかな薪の香りが漂う。
今、特に訪れる人々を魅了しているのが、現地アイヌの伝承者とともに森を歩く体験プログラムだ。自生する草木の伝承的利用法や自然への祈りの作法を直に学ぶ試みは、欧米をはじめとする世界のサステナブル・ツーリズムの潮流とも力強く共鳴する。過去の歴史を学ぶ場にとどまらず、未来の地球との関わり方を思索する拠点として、ウポポイは確かな存在感を放ち続けている。
極上の白老牛と太平洋の恵み:ガストロノミー・ツーリズムの最前線

食の観点からも、この地域が放つ磁力は圧倒的だ。北海道を代表するブランド和牛「白老牛」は、豊かな湧水と清涼な気候の中で慈しみ育てられ、とろけるような脂の甘みと深い肉の旨味を兼ね備える。町内の老舗炭火焼肉店や気鋭のシェフが腕を振るうレストランには、この唯一無二の味覚を求めて全国から食通が足を運ぶ。
だが、白老の食は肉だけに留まらない。太平洋に面した虎杖浜(こじょうはま)地区では、新鮮なタラコやサケ、極上のウニ、さらには近年評価が高まるサクラマスなどが水揚げされ、地元の食卓を華やかに彩る。最近では、伝統的なアイヌの食の知恵をモダンフレンチやイタリアンへと昇華させた革新的な一皿を提供する店舗も登場し、訪れる人の味覚を刺激してやまない。
美肌の湯「モール温泉」と『界 ポロト』が変えた滞在の質

温泉ファンを唸らせるのが、世界的に見ても希少な植物由来の有機物を含む「モール温泉」だ。太古の植物が気が遠くなるような時間をかけて堆積した地層をとおって湧き出る湯は、琥珀色に澄み渡り、肌にまとわりつくような極上の滑らかさを持つ。古くから地元の人々の湯治場として親しまれてきたが、そのリラックス効果と美肌効果が今、再び脚光を浴びている。
その象徴といえるのが、ポロト湖畔に佇む温泉旅館『界 ポロト』の存在だ。建築家・隈研吾氏らが手掛けたアイヌの伝統建築「ケトゥンニ」を思わせる独創的な大浴場は、まるで湖の自然と一体化するかのような幻想的な湯浴み体験をもたらす。かつての日帰り立ち寄りスポットから、上質な空間で数日間を心静かに過ごす「滞在型リゾート」へ。まちの佇まいそのものが、洗練された大人の隠れ家へと生まれ変わっている。
新千歳空港から40分。絶妙なアクセスがもたらす「暮らすような旅」
白老の魅力を語る上で外せないのが、その驚くべき立地の良さだ。北海道の空の玄関口である新千歳空港からJR特急でわずか40分。札幌市内からも車で1時間半圏内という抜群の近さにありながら、一歩足を踏み入れれば大都市の喧騒とは無縁の別世界が広がる。
この地理的な利便性は、数日間の旅行者だけでなく、ワーケーションを楽しむ層や多拠点生活者にとっても最高の環境だ。朝は湖畔の清々しい空気を吸いながら散歩し、日中は静かなカフェで仕事に没頭する。夕方には天然温泉で汗を流し、夜は地元の酒と新鮮な海産物に舌鼓を打つ。都市の利便性と豊かな自然が無理なく調和した「暮らすような旅」が、ここにはある。
移住者がもたらす新しい風:多様なクリエイターが集うコミュニティ
ここ数年、白老には全国から志を持った若いクリエイター、料理人、起業家たちが相次いで移住している。古民家をセンス良く手繰り寄せた私設ギャラリーや、地元の水を使ったクラフトビール醸造所、焼きたてパンの香りが漂うベーカリーなどが街の各所に点在し、歩くたびに新しい発見がある。
何より素晴らしいのは、昔からの住民と新しくやってきた人々が、自然体で互いを尊重し合う寛容なコミュニティ文化だ。多様な価値観を受け入れるオープンな気風があるからこそ、新旧のアイデアが混ざり合い、街全体に心地よいリズムと生き生きとした人間味が通いわせている。
自然と歴史が織りなす未来:2026年、白老町が提示する持続可能な地域像
日本の多くの地方都市が過疎化や地域経済の停滞に悩む中、白老町は自らの歴史文化と豊かな自然資源を軸にした「持続可能な地域づくり」で見事な答えを示してみせた。自然環境を保護しながら価値を伝えるエコツアーの取り組みや、地域内での経済循環を目指した地産地消の徹底など、未来への歩みは実に力強い。
太平洋から吹き抜ける風が心地よいこの街に身を置くと、流行のサイクルに惑わされない、本物の豊かさとは何かを提示されている気分になる。アイヌの伝統思想が教えてくれる自然への敬意、大地の恵み、そしてあたたかな人の温もり。2026年、進化を続ける白老町は、これからの時代を生きる私たちに新しいローカルの価値を力強く問いかけている。 (出典: 白老 町(Yahoo!ニュース))